コンテンツ文化史への誘い

コンテンツ文化史学会会長・吉田正高のブログです。 

『釣島灯台旧官舎保存修理工事報告書』1998年、松山市

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なんとか修士論文を書き終え、無事に?博士課程へと進学したところで、また別の先輩から文化財建造物保存技術協会でのお仕事を紹介していただきました。

 

文化財建造物保存技術協会は、その名のとおり、国指定の重要文化財や、自治体指定の文化財のうち、建造物の調査・修復を主に行う団体です。

http://www.bunkenkyo.or.jp/

 

私は専門調査員である小川保さんの下で、主に古文書や部材墨書、棟礼などの解読を行わせていただくことになりました。

 

協会での最初のお仕事は、愛媛県松山市にある市指定の文化財建造物「釣島灯台旧官舎」の修復に関する壁下文書の解読でした。

 

「釣島灯台旧官舎」

http://www.city.matsuyama.ehime.jp/shisetsu/bunka/turusima_setsumei.html

 

当時の日誌や備品台帳が、吏員退息所の壁の下張りとして使われているのが修復中に発見され、これを丁寧にはがした文書を整理していく作業を延々と続けていきました。具体的には、綴りが解かれてバラバラになった1枚1枚の日誌から、まずは灯台の職員名を抽出し、職員交代のローテーション表をつくり、それと日誌の内容情報からの前後関係の整合性を加えて、日付順に並び変えて復元していくという、ちょっと狂気じみた(笑)作業でした。とはいえ、前後関係がピタッと整合して、日順が判明した時の嬉しさはひとしおでしたね。

 

報告書自体も、本文だけで220頁ある充実した内容でしたが、そのうち100頁を壁下文書を中心とした文献資料の翻刻掲載にあてることになり、苦労が報われてほっとしました。

 

ここでのお仕事は、文献史学のみに特化しそうだった自分の研究スタイルに、歴史的建造物という現存する実物・実体から歴史的意義をいかに見出すのか、という視点を与えてくれたという意味で、とても勉強になるものでした。

 

松山市指定文化財釣島灯台旧官舎保存修理工事報告書

http://ci.nii.ac.jp/ncid/BA37491785